第5弾 「社会を変革できるリーダーの育て方 ~大学の取り組みと企業の目線からみるリーダーとは~」

社会を変革できるリーダーの育て方 ~秋田からの挑戦~

社会のグローバル化のもと、日本は活力を失いつつある。グローバルリーダーが育っていないことも、大きな要因のひとつである。国際教養大学は最近注目をされるようになったが、私どもが挑戦と呼ぶ人材育成の取り組みについて話してみたい。
開学は2004年4月。掲げた教育目標は、大きく次の3つである。まずは「コミュニケーション能力の養成」。そのうえに「教養教育を施す」。さらに、「行動力を持った人材を生み出す」。ちなみに、初年度から意外にも学生募集は順調であった。「全部英語・留学必修」、この漢字8文字のメッセージが高校生の胸にも響いたのだと思う。
ただ、最初から全てが順調であったわけではない。たとえば、留学必修は本学の特徴であったが、開学当初は提携大学はわずか2校しかなかった。そこで、私も含め教職員が世界中を行脚して開拓し現在は122校にすることができたが、日本の地方の無名校が、世界の一流校と提携交渉をすることは大変なことであった。
また、教員の半数は外国人だが、その確保にも苦労を重ねてきた。本学では「英語で授業をすれば良い」では済まない。教育力を徹底的に重要視しているので、応募者数は非常に多くとも、それにかなった教員は必ずしも多くないのである。
こうした努力の積み重ねが教育サービスを高めることとなり、ひいてはほぼ全ての都道府県から学生が集まることにも繋がっているのだと思う。

ここで国際教養大学の特徴を整理してみたい。
まず、先述した全部英語・留学必修。さらに少人数教育の徹底。平均18名で行われているので、授業では何らかの発言をしないといけない。自分は高校では優秀だった筈なのについていけないという状況になる。この“挫折体験”は必要なものだと思っている。留学時には更に厳しい現実を経験するが、これを自らの力で乗り越えることで精神力が鍛えられ、行動力が身につく。
そして、1年次生に対する寮生活の義務付け。留学生と同室が基本で、ここでいきなり異文化体験をする。コミュニケーション力も磨かれるうえ、濃密な人間関係により人格形成にも寄与する。他にも、24時間開放の図書館、専任教職員はすべて3年の任期制、学生による厳格な授業評価などの特徴をもつ。特に留学生からの評価は非常に辛い。カリキュラムも、国際コードの採用はもちろんのこと、内容も国際的に通用するリベラル・アーツ・カレッジにふさわしいものになっている。
しかし、何よりの特色は、教職員が一体となって全人教育に心血を注いでいることだろう。教職員と学生との距離は高校以上かもしれない。
本学のスローガンは「グローバル社会においてリーダーたれ」であるが、そのためには「求められる能力」と「求められる資質」の2つを充足することが必要だ。前者は国際通用性のあるカリキュラムで実現を目指す。後者は積極性や受容性、好奇心だが、これらは厳しい勉強(4年間で卒業できる学生は半分)、異文化を体験する寮生活、1年間の留学で育んでいく。しかもそれを教職員が一致協力して支えていることが最大の特徴なのである。
教職員は全員任期制であるが、業績評価では教育のウエートが最も高い。土日でも、授業の準備のためキャンパスには多くの教員がいる。授業は少しでも手を抜くことはできない。それでも、教員たちは「とにかく学生が良い。この環境は教員冥利につきる」と言う。彼らは「For our students」という意識をもって行動している。それは、職員も同様。教員と職員は車の両輪であり、それが徹底されている。教員と職員がコミュニケーションを密に取り、協力し合って、グローバル社会におけるリーダーを育てていることが本学の強みである。 

もっとも、グローバルリーダーは、4年や5年で生まれるものではない。問題を発見し解決する能力を身につける、資質を磨く、いわば足腰を鍛える、そういうところまでは何とかできていると思う。入学時に比べれば卒業時の学生の成長ぶりには目を見張るものがあるが、まだまだ完成と言うにはほど遠い。私たちの挑戦には終わりがない。

最近、マスコミで就職が良い大学という形で取り上げられることもあって、多くの受験生が志願してくれるようになった。しかし、就職は本学の人材育成の目的ではない。高校訪問時には「意思の強い、夢を持った気概のある子を一人で良いから受験させてください」とお願いしている。チャレンジ精神にあふれた学生を集め、真のグローバルリーダーに育てるべく、これからも挑戦という名の試行錯誤を続けていきたい。

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磯貝 健氏(いそがいけん)

国際教養大学 参事兼秘書室長。米コーネル大学経営大学院修了。1985年横浜銀行入行。本店営業部、国際企画部、ロンドン支店、人事部、リテール企画部等などを経て横須賀地域個人営業部長。2004年に国際教養大学に移り、総務企画課長、教務課長を経て現職。

磯貝 健氏(いそがいけん)